俺の名はリッジ。自慢じゃないが結構イケてる方だと思う。なのに、何故か寄って来ないんだよな、女の子が。そう、あいつ位しか…。リッジってのは、古代語で虹って意味らしい。何でそんな事を知ってるかっつーと、まあ、死んだ親父が古代語の学者だったからだ。言っておくが、学者になんかなるもんじゃない。絶対にない。親父が生きてた頃、俺達の生活はそれはそれは慎ましいものだった。毎日の食事と言えばイモと野菜の欠片の浮いたスープ。学者ってのは寝る間も惜しんで研究して研究して研究しても得られる成果はほんのちょっと、実入りは猿の鼻くそ程度。まともな人間のなる職業じゃない。俺みたいな真面目な人間は、こうして得意分野を糧として生きていく訳だ。即ち、槍の腕。自慢じゃないが9歳の頃から鍛えた槍の腕前は伊達じゃない。その槍の腕を武器に我が麗しの祖国メリーラントの平和を守るため、こうして城の衛兵隊の一員となった訳だが、これが失敗だったね。衛兵ってのは主に城の警備と情報収集を任務とする。はっきり言って思ってたより死ぬほど地味な仕事だ。下っぱだから城の中も制限付きでしか入れないし、その癖いざとなれば真っ先
に戦争に送られる。もっとも、その方が俺の槍も鈍らなくて良いかもしれねぇな。加えて、制服がダサい。そんな訳で、入隊当初は少佐は確実と言われていた俺がこうして門番なんかやらされてる訳だ。ちっ…やっぱりどうせ入るなら近衛隊に入るべきだったぜ。近衛隊はカッコイイ。皇帝陛下や皇后陛下の身辺を警護するのが役割で、城への出入りも自由だし、毎日のまかないもスペシャルメニューだ。俺達の飯とは給食のおばさんの気合いが違う。制服もそれなりにイケてる。あーあ…おっと、交代の時間か。こんなくさくさした日はあそこに行ってみるか…さんざん見飽きた顔だが、たまにはあいつの顔も見ておかないとな…。