雨の通り道
5月16日作成 管理人・小雨がオリジナル・版権イラスト、日記などを雑多に書いているブログです。
京極夏彦とコバルト文庫
- 2018/06/02 (Sat) |
- 日記というか雑記 |
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イラスタで描いたロココのお姫様ドレス習作。
30日にあざみ野のブックオフで京極夏彦の「虚談」買ってましたー
2月に出たばかりという事で、10パーセントオフクーポン使って
更に会員カードのポイントを使ってもなお高かったけど、
内容は買って悔い無しでしたー「冥談」「眩談」「鬼談」に続く読みきり集。
過去作3作は一話毎に舞台も語り口も全く違う短編集でしたが、
今回は共通の主人公が色々な人に話を聞いたり過去を回想したりする読みきり連作集という事で
最初はどうかなー…という感じで読み始めたけど、
相変わらず京極夏彦の書く恐怖譚、不思議譚は文章にも設定にも凄く色気があって
セクシャルな意味でなく薫り高い物語ばかりで大いに満足しました。
題一話の「レシピ」はラストのこれまでの話は最初から最後まで嘘だからであるという一文で
それまでの不可解な話に引き込まれて読んでた身としては突き放されたような感じがしたけど
それも色気のある突き放し方で凄く快感を感じましたー
このままずっと同じパターンで最後はみんな嘘でしたで締めくくるのかなーと思ってたけど
第2話「ちくら」もちくらという言葉の意味不明さと
明治時代の百美人に選ばれた芸妓の写真を巡るミステリーに引き込まれたし、
嘘も今度は話の語り手である主人公の友人が言うという風に、
毎回「虚談」の嘘の切り口を変えてくるのがまた絶妙な快感を与えてくれて
すっかり夢中に読んでしまいましたー
この人もぞくぞくのツボを本当によく心得ていて
「ベンチ」の神棚を破壊する「おじさん」をじっと見つめる薄汚い老婆とか、
「シノビ」の中身親父な舞台女優のあけすけな話からギャグ調の会話で進んでいくのに
女優の買った田舎の家で日本刀で殺された老人がいた事が判明して
ラスト女優は行方不明になり、
台所には手裏剣が刺さっていたというぞっとする感じも良かったです。
「ハウス」も大体展開は読めたけど、女性ライターの吐いた嘘がこれは友人の話という部分で、
主人公が女性ライターは死んだ父親に
早くハウス(冥土)に帰って欲しいのだろうと思い、
女性ライターがあいまいな笑みを浮かべるところ好きです。
ラストの「リアル」だけ現実と虚構がない交ぜになってどこからが嘘か分からなくなる、
というこの手の話にありがちな展開になるのは予想できたけど少し残念だったけど、
一話30数ページ強の話が9話と、長さ的にも1話1話疲れなくてちょうど良いし
バラエティに富んだぞくぞくする作品ばかりで大変満足しました。
主人公が人から話を聞く話は会話文も軽快で良いんだけど
主人公だけの語りで進む話はややダレる感じでしたが、全体の出来はとっても良かったですー
昨日1日はもはや月1冊しか出ないコバルト文庫新刊の発売日。
はるおかりのさんの「後宮瑞華伝 戦々恐々たる花嫁の謎まとう吉祥文様」
いつも一定以上の水準は満たしてくれるはるおかさんと
表紙の美麗な由利子さんイラストにホイホイされてちゃんと定価で買いましたよ…
表紙だとヒロインの夕麗が悪女っぽく見えたけど、
本編では普通に可愛い女の子で良かったです。悪女ヒロインも嫌いじゃないけど。
カバー夕麗も垂峰も青・紺系の衣装で帯も紺色なのでシックな感じに見えるのが素敵。
それにしても序章でいきなり夕麗が妊娠した事を知って
皇后が流産した時にも見舞いにも来なかった皇帝垂峰がかけつける、という文で始まって
ここまであからさまなヒロイン上げは無いわー…皇后様可哀想、と思ってしまいました。
ラスト序章でも下げられてた皇后様が
丹蓉に毒を盛られて床から起きられない身体になるとか可哀想すぎる…
序盤は皇后が後宮の妃濱達を統括して内助の功を発揮してる感じとか
毎朝の朝議の描写とか、後宮の佳人がしのぎを削る煌煌しい雰囲気が楽しめましたー
でもヒーローの垂峰が汚職が蔓延する宮中を変えたいと皇帝位を望んで励んでいたという割に
具体的にどんな税制改革を考えてるのかとかが語られないので
はるおかさん作品に求められてるのは後宮きらきら描写と
甘甘溺愛だけというのも分かるのですが、
垂峰の努力と屈託がいまいち伝わらなくて浅く見えちゃうのは残念。
残念と言えば今回は開始たった60ページちょっとで夕麗が垂峰にちゃっちゃっと純潔を捧げて
少女小説で最初の夜って大事な見せ場のはずなのに、と目が点になりました…
だからこそその後の夕麗の「口づけをして欲しい」という願いも際立つわけですが、
肉体関係を持った後口づけをしてから恋が始まるというのははるおかさんならではだなと。
ただ夕麗が視える体質だというのは第1章の
壮絶な死を遂げた先代皇帝と普寧妃の霊の件だけで死に設定になって残念。
夕麗がもう恋なんてしないという原因になった元恋人のキャラも雑で小者で、そのせいで
垂峰に恋したらまた裏切られる、多くの妃濱を持つ垂峰を自分だけのものにするなんて無理だ、
という物語の根幹を成す夕麗の葛藤が最後の最後で軽く見えちゃうのもなあ…
ミステリー部分も背格好が似ているだけで全くの他人である条敬妃と宦官の少年が
化粧法をお互い変えたくらいでそれまで見知っていた妃達の目さえごまかせるほど
そっくりになって入れ替わるという雑さに言葉も出ませんでした。
ラストの丹蓉の狂気は大体予想できたけど、まあ多重オチは頑張ってたかな。
でもまあ夕麗と垂峰の心が近づいていく感じはちゃんと説得力を持って書かれてたし、
良い台詞もたくさんあって脇役の理不尽な不幸や毎度のえぐいエピソードに目をつぶれば
安定した話運びで売れてるのも分かるわ、という出来でした。
垂峰に恥ずかしさでいっぱいになりながら生まれて初めての口づけをねだる夕麗可愛かったし、
優しく口づける垂峰と目を見開いてされるがままになっている夕麗の挿絵萌えましたー
正直今年買ったコバルトの中では一番良かったかも。
個人的にまた出オチで終わるんだろ、と思ってた拷問好き宦官亡炎が
最後まで良い働きしてたのも良かったですー
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7月15日生まれのかに座、A型。
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